バイオベンチャー創業記 EPO mimetics

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EPO mimetics

  • 2006/06/28(水) 12:24:26

武田がAffymaxから腎性貧血・がん性貧血治療薬Hematideの日本以外の開発・販売権を獲得した。
既に日本の開発・販売権を獲得しているので、
これで全世界についての権利を獲得したことになる。

HematideはErythropoietin(エリスロポイエチン:EPO)の低分子mimetics(同じ働きをする別分子)で
EPOのレセプター(EPO-R)に結合して
EPOが結合したとき同様のシグナルをいれ
赤血球の増殖を促す。



Affymax

かつて私はキリンにいたときに
EPOの兄弟ともいえるTPO(Thrombopoietin)のレセプターをいろいろいじっていた。

当時のEPOなどのサイトカインが
受容体(receptor)を活性化するメカニズムに関して
セオリーはこうなっていた。

1.EPO-Rはmonomerで細胞膜状に存在している
2.そこにEPOが来て、EPO-Rその1と結合し
3.次いでEPO-Rその2と結合する
4.結果、2つのEPO-Rが近傍によることになり
5.細胞内のシグナルを伝達する部位が近寄る
6.近寄ったことで酵素活性部位が互いに他の被修飾部位をリン酸化し
7.以降のシグナル伝達のトリガーを引く


実際に、ウィルスのつくるgp55というタンパクがあって
これもEPO-Rに結合してEPO-Rの2量体化(dimerization)を引き起こし
Erythroleukemia(赤血白血病:赤血球が異常増殖する疾患)になるし
EPO-Rのアミノ酸の1部がCysteinに変異したものでは
Cys同士が共有結合し、EPO-Rをdimerizeさせて
同じくErythroleukemiaを引き起こすことが知られている。
つまりEPO-Rが何らかの方法でdimerizeしていればいいということが
裏付けられていた。

その後これは1部修正され、
そもそもEPOはdimerで存在しているが
EPOが来ることで立体配置が変わることが分かった。

EPO-R

Source:Endocrinology Vol. 143, No. 1 2-10



ともかく、製薬会社は
いろいろな方法により低分子やペプチドのライブラリーから
EPO-Rをdimerizeさせシグナルを入れる非EPO分子を探し始めた。
同様に先にも書いたTPOでも同じことを
いくつものグループで探していた。

低分子で同じ効果を出すことには意義がある。
何故なら経口投与を可能にできるからである。
静脈注射である限りは
患者さんは定期的に病院に行き
注射をしなければならない。
しかし経口剤であれば
患者さんは自分で服用できたりするので
QOLが大きく向上する。


そんな期待の元にいくつものEPO-Rを活性化する分子が見つかり
報告がされていた。
そんな中、今でも覚えているが、
1998年のNatureに以下のタイトルの論文が発表された。

"Efficiency of signalling through cytokine receptors depends critically on receptor orientation"

Amgenのチームの論文であるが、
EPO-Rを含めサイトカインレセプターは2量体化すればいいのではなく
くっつく立体配置が重要だというのである。

つまりこういうことだ
ある分子はEPO-Rの2箇所に結合する能力を持ち、
EPO-Rを2つ細胞膜状で近傍に引っ張ってくることができる。
しかし、くっつく向きが
Natural LigandすなわちEPOの場合は
EPO-Rは180°で対向するのに対し
EPO-mimeticsの場合は120°で対向する
結果、シグナルの1部は更新するが
1部のシグナルは不全であり
正常の赤血球増殖が起こらない。

以後同様な報告が相次いだ。
An antagonist peptide-EPO receptor complex suggests that receptor dimerization is not sufficient for activation


長い話になったが、
このmimeticsにはいろいろ深い部分があって
最終的には人で効果が確認できるまで
本当にEPOを置き換えられるか分からない。
(逆にEPOのいいとこ取りだけできる可能性もある)

そういった意味で、
武田の博打の結果はまだ分からない。

契約一時金1億500万ドル
マイルストーン総額2億8000万ドル
発売後の販売金額に応じたマイルストーン 最大1億5000万ドル

この賭け、吉と出れば
余裕で回収できるだろうが
果たしてどうなるか。


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