バイオベンチャー創業記 PMDAのレビューは短くなるか?

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PMDAのレビューは短くなるか?

  • 2010/11/06(土) 12:09:42

表題の質問は元FDA長官のDavid Kesslerにさっき聞いたもので
その答えは"We set the clear target and committed"
答えているようないないようなですが
まあ痛烈な皮肉を込めての答えであると思います。

時間を巻き戻しましょう。

Kesslerにそんな質問をしたのはBerkeleyで開催された勉強会です。
半日の彼の持ち時間でかれはこんな話から始めました。

「自己紹介に先立って質問するけど、FDA長官ってどんな人がなると思う?」
アメリカだから会場からさっさと答えがボロボロと出ます。
少し彼が整流してまとめたのはこういうプロファイルです。

1. MD(Medical Doctor) to get credibility from
 a. Doctor
 b. Healthcare Industry
 c. Advocacy Group (患者団体ですね)
2. Managing Skill proven by Experience
3. Publicly aligned (偏って無くかつその時代の要請に沿っている考えの持ち主)
4. No experience at industry (利益代表にならないように)

余談ですがFDA長官の給与は$180k/yr(1500万円ぐらい)で
あの責任においてこの安さで7年間働くと言うのも要件かもねと

FDA長官の任命権というのはHHSのsecretary(日本の大臣ですね)

Kesslerが長官に在任したのは90年から97年で
当時は3つの問題があると彼は認識していたそうです。
1つは長い承認審査期間
2つ目はそもそも薬が承認されないこと。
当時はAIDSが大きな社会問題になっていましたが
AZTしか承認されていませんでした。
最後はジェネリックの問題です。

業界のことをよくご存じの方は
この3つが3つとも「現在の」日本の問題と全く一致することにお気づきでしょう。
つまり20年behindなのです。

さて、彼は39歳で長官に就任するに当たって2つのゴールを設定しました。
(39歳というのは日本ではあり得ない設定ですね、これがアメリカの強さの一つです)
1つは承認審査期間を12ヶ月に短縮する。
もう一つは良い薬はアメリカで世界で最初に承認されるようにする。

では何をどう動かしたらそれが実現するか?

FDAの出来ることは2つ
1つは規制を作り責任をimposeすることで逸脱に罰を設定すること。
2つ目はincentiveを作り動機付けをすること。

1つ目はどの時代も行われている手法ですが
2つ目に関して彼が行った改革が2つあります。
それはFast Trackの運用です。
必要な領域の薬には優先審査を行い
また長期のフォローアップが必要な疾患の回復に代え
surrogate(代理)マーカーによるエンドポイントの設定を認めました。
またreviewer(審査官)の数を増員したわけですが
これには予算が必要になるために
製薬業界に承認審査を12ヶ月に短縮する代わりに
審査費用を大幅に増額をしました。
でも1日承認が早まれば1日あたり数億円単位で収入が増える業界に取っては
全然余裕のオファーです。
これはあっさりと通ることになったわけです。

結果、当時平均38ヶ月かかっていた審査期間を12ヶ月まで短縮し
バイオロジックスのような先進的治療薬が続々と承認されるようになったのです。

一方でこういった方針に対する懸念もあり
承認が雑になることでダメ医薬品が承認されるリスクが高まる可能性があるわけですが
在任期間に承認されてwithdrawされた薬は「いまのところ」それ以前に比べて増えていないようです。
(ただし有名なVioxxの例はあります)

そんな彼も最初はFDAの長官がどんなボタンをおせば事が進むのか相当難渋して
自身で大変勉強になったというケースは
P&Gの作っていたシトラスオレンジジュースが濃縮還元にも関わらず"fresh"と表記していたのに対し
表記が虚偽の記載に当たるとして就任の翌年に
抵抗を続けるP&Gのミネアポリス倉庫で差し押さえを行った日には
多くの議員から電話を受けて避難をうけたそうです。
それで学んだのは先に後盾をきちんと形成してから事を行うということのようです。

彼を一番有名にしたのはタバコ会社との戦争で
タバコは薬かということを巡り規制がかけられるか否かの長期闘争をしたことによります。

興味のある方は詳細を彼の著書

に求めていただければと思うのですが
FDAの定義において薬の定義は

"an article (other than food) that intended to affect the structure or function of body"

となるわけですが
下線の"intended to(意図して)"という部分が争点になり
長い闘争が続きました。

タバコは明らかに体に影響を与えることは確実で
それは実際にいろいろな臨床的なデータをとれば証拠になり得るわけですが
問題はそれが果たして意図してなされた物かどうか。
当然タバコ業界はしらを切るわけですが
特許や内部機密文書の入手により
ついにニコチンを「意図的に」増量して売り上げをはかったり
未成年をターゲットとした裏キャンペーンの存在をつかみ
規制の網をかけることに成功したわけです。

でも際のオレンジジュースのような問題で政治家との対峙に相当苦労した彼が
銃業界とならんで最もロビーの強うそうなタバコに切り込んだのは
彼のスタッフの一人がしつこく彼にその規制を絶対にすべきだと進言し続けたからだというのです。
後年になった彼が知ったというのは
そのスタッフには当時肺がんで入院している父親がいて
彼は毎日出勤前に父親の病床に寄ってからFDAに来ていたという事です。
彼の意欲はすさまじく、Kesslerが
「これがこけたら俺もお前も役人どころか業界人としての生命が絶たれるぞ」
といったところ構わない。後盾も用意してきたと
賛同してくれそうな政治家の準備までしてきたそうだ。

結局この話が本当に動くのは
KesslerがClinton政権にも再任命されて2年たった後で
Clintonが"I want to kill them(タバコ業界)"といったところで
勝負の流れが変わったというのだ。
そんなClintonでも就任直後にはそれはまだ早すぎると却下したというのだから
政治闘争の凄まじさを物語っている。

振り返ってKesslerがいうのは
FDAの長官だった時代は毎日戦争に出かける気持ちだったと。
何をやるにしても内外で激しい抵抗に遭い
それは折れそうになることばかりだけれど
でも自分が完全にCommittしなければ何も動きはしないし
Committするためには自分の信条とかそういったものにきちんと裏付けされていなければ
到底成し遂げられないと思うと。

全く耳の痛い話であると思う。

さて、話を最初の質問に戻すと
日本の承認審査などの現状に疑問をもつ僕は
これはどうしても聞いておかねばならないと思って
日本の現状、そして長い承認審査期間に対する対策として
PMDAのレビュワーの増員を政府が決めたが
それでPMDAのレビュー期間は短縮すると思うかと聞いたところ
かれが皮肉と自負を込めて返した答えがそれだった。

さて、日本は誰が腹をくくって毎日戦争に出かけているのだろうか。



参考:彼の次のアジェンダ。アメリカの肥満の話。


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