バイオベンチャー創業記 ストックオプションが魅力であり続けるように

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ストックオプションが魅力であり続けるように

  • 2009/01/11(日) 00:00:01

ベンチャーにおいて
そこに参加することの魅力は
成功した場合のリターンであり
参加の形態は株主としてという場合もあるし
従業員としてという場合もあるし
創業者という場合もある
いずれにせよリターンは誰にとっても期待値であることは間違いない。

リターンという場合に
金銭的なリターンのみならず
そこで実績を上げて次のステップへの足がかりにするというのもリターンであるわけで
これは実際に大きなウェイトを占める重要な要素であると思っているが
ここでは金銭的なリターンに限定した話を書くつもりである。

ストックオプションについては
概念的には理解されていると思うが
念のために解説をしておくと
ある価格で株式を購入する権利にであって
特徴は「今」買わないでもよくて
うまくいったとき(株価が上がったときに)「行使」して
株を買うことができる権利である。

たとえば株価が100円のときに
100円で購入できる権利を獲得した場合
1000円になったときに行使できれば
900円の利益が獲得できる。
株との決定的な違いはダウンサイドリスクを持たないことで
株の場合100円で購入したものが0円になると
100円を損するが
オプションの場合は行使しなければよいだけなので
損をすることがない。

もうひとつの利点は
オプションを付与されたときにお金がなくてもいいことで
100円がなければ購入することはできないが
株価が1000円になれば
きっと誰でもお金を貸してくれるし
借りたお金は利ざやですぐに返済できる。

オプションは従業員に付与する場合には
通常無償であるが
必ずしも無償である必要はなく
先の100円で買えるオプションをたとえば5円で売ってもいい。

さて概念は上記のとおりであるが
ただ実際にそれを獲得する立場になってみると
いろんなディテールが見えてくる。

一番重要なのは株価が上がりそうかどうかである。
100円で買えるオプションをもらっても
株価が100円以上にならなければ
いつまで立っても利ざやは出ないので
基本的に紙切れ同然である。
特に昨今のように株価が世界的に下がっている場合に
個々の会社の株価についても
先行きの期待は下がっていると思われる。
そうなると当然オプションの魅力はあなたの中で下がることになる。

つぎに重要に見えるのは自分の持分比率である。
例えば時価総額10億円の時点で
発行株式の10%の購入権(1億円分)をもらっているのか(A)
発行株式の1%購入権(同1000万円分)をもらっているのか(B)
という話である。

会社が上場するにせよ買収されるにせよ
そのときに議論になるのは株価ではなく
時価総額であるから
例えば先の会社が100億円で買収されたとすると
時価総額は10倍になるわけであるから
(A)の場合は利益はは10-1=9億円になるが
(B)の場合は持分は1億-1000万円=9000万円になる。

「比率」で話をするのは時価総額=株価X株式数であるからで
上記の時価総額10億円の会社において
株価100円X100万株というのと
株価10円X1000万株というのは同じコトで
株価だけで議論しても、株式数だけで議論しても
意味がないからである。

(ちなみに簡単のために株とオプションをごちゃ混ぜに議論している)


この辺まではまだ経験がなくても知識があれば知っていることである。
ここからがだんだん深くなる。

次に気になるのは他の誰がどれだけもらっているかだ
実は自分の個数というのは
もらえばもらっただけ「ありがとうございました」ということになるが
他人がどれだけもらったかを知ることになると
その多い少ないが非常に気になり始める。
つまり「自分はこんなにがんばっているのに、あいつより少ないというのはどういうこと!?」
という考えが心の中に萌芽する。

数の多少は働きぶりだけでなく
いつ会社に参加したかによって
とっているリスクの割合が異なるわけであるから
本来的には単純比較はできないし
開発部門にいる人と
管理部門にいる人を
単純に比較することは難しいはずなのだが
悪いことに具体的な数として現れるから
これは成績表のようで気になってたまらなくなる。

さらに気になるのは
いつ辞めるかである。
オプションをもらうと
就職したばかりでも辞める時のことを想像する欲望に駆られる。
なぜならオプションの契約書に
「辞めたらこの部分の権利はなくなりますよ」
と書いてあるからである。
おのずと
「3年はいなきゃいけないんだ」とか
「2年だと全額で1億もらえるとすると、そのうちの半分しか手に入らないんだ」とか
「もう1年いれば5000万円余分に手に入るんだ」
とか考えてしまうことになる。
皮算用にもほどがある話ではあるのだが。

そして気になるのは税金である。
オプションといっても行使をすれば利益が出るので
当然税務署があなたを見過ごしてはくれない。
ただしチャレンジ精神に敬意を表して
「税制適格」とかいう制度があったりして
払うタイミングで優遇されたり
税率で優遇されたりする。
「1億円儲かっても半分とられちゃうんだ」
「半分ずつ行使したら税率は下がるかな」
と考えてみたりする。
ただここまでくると皮算用を通り越して完全に妄想の世界になる。

しかし、上に受権者間の付与数の大小の話をしたが
結局想定リターンは
 付与数 x 差益 x 確率
であって一番の大きなファクターは
最後の「確率」すなわちオプションが意味のあるトリガーイベントを迎えるか否か
が最大の問題であり
そうでなければ本当に取らぬ狸や妄想のままの話になってしまう。
そのためには社員だけでなく株主も含めて全員が
力を合わせてトリガーイベントに向かう努力をすることが重要である。
逆にいうとそういうモティベーションをみなが持つような
付与割合を設定することが重要で
そういう意味で配分を決定する機関の責任は重い。



さて私たちの会社の周辺で少し議論になった話しを
差しさわりのない範囲で書こうと思う。



ひとつはExitの変化の話である。
これまでに株式市場が好調だったときには
会社が株の意味でひとつのゴールにたどり着くというのは
株式公開がそれであった。
したがってオプションの契約もそれに基づいて設計されており
公開が行使のための条件になっていたのが通例である。

しかし昨今の市場の変化と
またバイオ業界の特徴として
製薬会社などによって買収されるというのも
かなり確率の高いゴールになってきた。
そうなると株式公開を条件として設定するのは適当ではなく
公開でも買収でもどちらにおいても
オプション受権者に利益があるようでなければならないと考える。
なぜならそうでなければ受権者は買収にインセンティブが働かず
せっかくゴールになりうるのに素通りしてしまうように
事業を誘導することになるからである。

もうひとつは日米の制度の違いである。

最近ではこれは解消されつつあるのだが
日本のベンチャーはこれまでに普通株式で資金調達をすることが多かった。
大して米国の場合は優先株式によっている。
優先株は普通株よりも10倍ぐらい株価が高い「(=獲得するのに支払う額が多い)代わりに
残余財産優先分配権 などいろいろ優先条件がついている。
そうすると会社には普通株と優先株という2種類の株式と
そのそれぞれの株価があって
これが互いに連動して順調な会社においては上昇していくことになる。
先の従業員に対して付与されるオプションは
通常は普通株に対して設定されるので
各種制限がある代わりに行使価格は普通株の株価を基準にしており
従って優先株の株価よりもはるかに安い。
例えば投資家が優先株を1株1000円で買うときに
ストックオプションは行使価格100円で
しかも権利を無償で付与される。

米国の従業員はそのライフスタイルとして
日本人よりもはるかに就業の流動性が高く
3年ぐらいで会社を移って行くのは普通のことである。
そうなると株式公開や買収を迎えるまで同じ会社に「粘らず」に
途中で別の会社に移っていく。
就業は投資と異なって同時期にいくつものポートフォリオを組めないので
時間軸でポートフォリオを組んで
つまり人生の中で経験する5-10社の中で
成功する会社が1、2社あればいいという考え方を
しているんだと誰かが言っていた。

そうなると普通株式に基づいた日本の制度においては
行使価格の高いオプションは
退職の時点ではまだ行使すべきかどうか判断できず
(安ければとりあえず行使して辞めていこうとなるが)
基本的には行使を放棄して退職することになる。
これは会社としては止むを得ないだろという考え方もできる一方で
そうなると就業期間内においてもオプションに対する従業員の魅力度が薄くなるので
リテンションを考える場合に給与一本で勝負せざるを得なくなり
キャッシュの貴重なベンチャーにおいては
痛手となってしまうと思う。
従ってそういう制度が一般的である米国人のスタッフを雇おうと思ったら
背景を理解した上で適切な設計をしなければならない。



今回の金融恐慌で
かつてシリコンバレーが謳歌していたIPO+ストックオプションというモデルが
少し変調をきたしているようではあるが
しかしながら莫大なリスクを乗り越えるベンチャービジネスにおいては
強力なインセンティブが設定されることは重要であり
それが少なくとも今までのシリコンバレーの成功を
引っ張ってきたひとつのツールであったのは間違いないと思う。
だからこれを環境に適したよりよいものに智恵を結集して磨き上げて
新しい産業を生み出すエネルギーに変えられたらいいと考えている。


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