バイオベンチャー創業記 抗体医薬のポテンシャルとリスク

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抗体医薬のポテンシャルとリスク

  • 2006/05/05(金) 15:52:07

3月13日,ドイツのバイオベンチャーTeGenero(www.tegenero.com)の開発する白血病およびリウマチ性関節炎治療を対象とした抗体医薬TGN1412が第1相臨床試験において重篤な副作用例をだした。TGN1412はCD28というT細胞に発現する膜貫通タンパクに結合し、アゴニスティックに作用する。この抗原は通常、B7/BB-1(CD80)またはB70/B7-2(CD86)糖タンパクを介して、Tリンパ球とBリンパ球の接着に関与し、T細胞活性化における主要な副刺激シグナルをもたらす。事件の詳細はNatureなどに詳しいのでそちらをご参照いただきたいが、本稿では抗体医薬のポテンシャルとリスクについて議論したい。
 抗体はターゲット抗原に対して特異的に結合し、さらに抗体によってはアゴニスティック、アンタゴニスティックに作用して細胞の活性化、分化、増殖を引き起こしたり、細胞死を引き起こしたりする。従って、特定の抗原が病態に関連してそのクリティカルパス上にある場合には非常に有効であり、その特異性を利用して他に影響を与えずに(副作用を出さずに)薬効を出すことができる。
 一方でその特異性が高いだけに、そのターゲット抗原の分布や機能が高度に理解されている必要がある。まだ抗体の体内分布を十分にコントロールすることはできないので、狙った部位以外にも抗原が発現していて、重要な機能を担っている場合にはそれに対する結合が原因で重篤な副作用を引き起こす可能性がある。つまり抗体と抗原は「鍵と鍵穴」の関係にあるが、その鍵穴が必ずしもたった1つの扉の鍵穴ではないという可能性があるということである。癌領域などリスク&ベネフィットで見ると大幅にベネフィットに傾いている疾患領域ならともかく(あくまで比較論として)、アレルギーなどの疾患領域においては副作用が担保されていなければ臨床試験に入ることは難しい。
ここでその評価を困難にしているのは種間の交差性の問題である。ターゲット分子あるいは抗原結合部位(エピトープ)は種間で保存されていない場合がある。エピトープの一次構造はおなじでもターゲットタンパクが100%のホモロジーを有していることは稀であるので、3次構造は必ずといっていいほど異なる。サルやその他動物における薬効や毒性に関するデータを臨床試験の予測としてヒトに外挿するときにどの程度種差を見込むかが難しい。例えば動物では抗ヒト抗原抗体の結合能力が1/10になるので、動物で見られた1の副作用がヒトでは10倍とするのかどうかというのは簡単に決着の付く議論ではない。ヒト組織への結合性を見ていくなどして傍証を重ねていくしかなく、本当の結果を知りうるのはあくまでも臨床試験でしかありえない。
CD28は免疫上のクリティカルパス上にある分子であり、他にもこの周辺分子をターゲットとして他にも多くの抗体医薬が開発されており、抗TNFα抗体(Remicade etc.)、抗CTLA-4抗体(Abatacept / Bristol-Myers Squibb)、抗PD-1抗体(MDX-1106/Medarex)、抗CD40抗体、抗ICOS抗体などが上市、あるいは開発されている。私も前職のワイズセラピューティックス、さらに前のキリンビールにおいて抗体医薬開発の経緯を見てきたが、現在開発中のプロダクトもおそらく当局への対応を含めて臨床試験に際してはより慎重な方向へ舵を切らざるを得ないのではないかと考えている。恐らく今後進められるべき議論は当局が抗体医薬の治験申請に際して求められるべきデータセットのガイドラインを明確にすることである。そうでなくければ現在開発を行っている企業は申請をしてみたものの大幅な追加を求められて、ベンチャーなどにおいては経営危機につながることにもなりかねない。是非期待したい。


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