バイオベンチャー創業記 2011年08月

スポンサーサイト

  • --/--/--(--) --:--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


haruhicomをフォローしましょう

旭化成のファスジル訴訟

  • 2011/08/28(日) 00:00:01

2011年8月19日 旭化成ファーマ株式会社 旭化成株式会社
スイスActelion社との訴訟における第一審判決について


これ、日本でちゃんと報道されていませんが、結構面白いネタです。

AsahiKasei

Actelion


経緯はこうです。
1. 元々は元 三重大学・名古屋大学医学部教授で現 株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所最高科学 責任者(CSO)兼開発研究所長の日高先生がRho-Kinase阻害剤、ファスジル(Fasudil)を合成 (1980年代)
2. 旭化成がくも膜下出血術後の脳血管攣縮及びこれに伴う脳虚血症状の改善を対象疾患に日本で開発。上市
3. 旭化成が狭心症領域の欧米の経口剤の権利をSchering AGにライセンス (2001年)
4. 旭化成は狭心症領域の欧米の経口剤、吸入剤の権利をCoTherix社(米国)にライセンス (2006年)
4. Actelion(スイス)がCoTherixを買収(2007年1月)
5. Actelionは競合薬VENTAVIS® (ILOPROST)を2005年より上市していた)
6. (それが理由か分からないが)ActelionはFasudilの開発を中止して塩漬けに(2007年以降)
7. 旭化成はActelionを忠実開発義務違反を理由に提訴(2007年11月)
8. ICC(国際商工会議所)の裁定では$91Mの支払いをActelionに命じた(2009年)→全額受領
9. 米国カリフォルニア州サンマテオ地裁はActelionに総額516.6百万米国ドルの支払いを命ずる一審判決を出した。(2011年8月)

ポイントは
Act社が競合薬の塩漬け目的でCo社の買収までしたという話。
新薬開発があまりにお金がかかるので、
折角開発した薬の売り上げ奪われるより、
開発し直すより、
会社を買った方安いってことです。

一方で単なる契約違反であればここまでの金額になることは
旭化成が販売していた金額(年間十数億円)を考えるとならないと思われますが
Antitrust法絡みの案件として捉えられたため
賠償金額が巨大化したものと思われます。

なお本件についてはActelionの意志決定に問題があったと株主に指摘されており
直後にボードメンバーの入れ替えがアナウンスされています。
02 August 201
ACTELION ANNOUNCES CHANGE IN ITS BOARD OF DIRECTORS


余談ですが、
準拠法および管轄裁判所がカリフォルニアであることを考えますと
契約そのものは旭化成にとってどうだったのかと推察しますが
きっとよい弁護士が付いたのでしょう。

以下リンク

2001年8月8日 旭化成株式会社
狭心症領域の経口剤のライセンス契約締結について


2004年3月9日 旭化成ファーマ株式会社
血管拡張剤 ファスジル経口剤の海外における臨床結果について


2006年6月29日旭化成ファーマ株式会社
ファスジル経口剤及び吸入剤のライセンス契約締結について


TUESDAY, 9 JANUARY 2007
ACTELION LTD. ANNOUNCES SUCCESSFUL COMPLETION OF ITS CASH TENDER OFFER FOR SHARES OF COTHERIX, INC.


2009年12月24日
米国CoTherix社との仲裁裁定について


Jul 30, 2011 3:55 AM GMT+0900
Actelion Wins $70.4 Million Reduction of Asahi Kasei Award in Fasudil Case



January 14, 2011
脈管学第 50 巻記念 特別寄稿
蛋白リン酸化酵素阻害剤:塩酸ファスジルの開発と臨床応用


haruhicomをフォローしましょう
スポンサーサイト

1000万円の壁

  • 2011/08/18(木) 00:00:01

米国滞在中にとあるUS のバイオテックを訪問する機会があった。

ビジネスの話のサイドラインとして、
報酬体系の話のディスカッションをした。

アメリカのバイオテックでは社員の報酬の基準は
会社のステージにもよるのだが

マネジメント(CxO, VP)          2000-5000万円
シニアクラス (Director)         1200-3000万円
スタッフレベル (Scientist, Specialist)    600-1800万円 (ポスドクあがりが前提)
アソシエイト (Res Assoc. Admin Assoc) 400- 800万円

が相場ではないだろうか。
人材は民間だろうとパブリックだろうと
上場企業だろうとベンチャーだろうと奪い合いなので
相場通りに出さないと、優秀な人材は来ない。
慎ましくやるバイオテック企業とか
パブリックだからあまり出さない研究機関なんて成立しない。
成立しても存在意義がない。

扱っているものが非常に高度なサイエンスや経験を必要とするので
はっきり言って中途半端にできる人材で
中途半端なレベルの仕事というのは成立しない。
それぞれの領域のBest brightestを集めて
これ以上ない仕事をしてようやく薬ができるか、
それでもできないかというレベルのビジネスである。

ここに日本に厳然としてある「1000万円のバリア」
大きく立ちはだかる。
給与が1000万円をなかなか超えないという壁だ。

日本の大手の製薬企業に行ったところで
2000万円に到達するのは大手の部長クラスだ。
よく聞くのは、海外現地法人に送り込まれた社長の給料よりも
スタッフの給料の方が高いという話だ。
これを日本の報酬体系がアレだから、というのは間違いだ。
本当は日本の社員だってもっと貰っていいのである。
もっと高い報酬を出して、
その上でもっと少ない人材でやる方が事業は効率的だ。
余分な人がいれば、それだけで余計な調整やトランザクションが発生する。

ざっくり、日本の製薬会社は半分の人数で十分にできる。
その代わり給与は倍出して、
国際的に競争力のある人材を確保すべきだ。
採用するのはそして日本人に限定する必要も無い。

会社にも同情の余地は多少ある。
日本では法制度上リストラが容易ではない。
こんなビジネスだからそれぞれの領域高度なスペシャリストを
採用する必要があるわけだが
事情によってはその領域のビジネスを止めなければならない判断も時としてには会社にある。
このときに社内の他の部門にコンバートなんてそんなこと容易な訳がない。
だってスペシャリストな訳だから。
それよりはバッと部門を畳んで
その上で新しい事業を始められなければ
機動性の面で海外の企業に太刀打ちできるハズがない。

日本の雇用体系は大きく変えるべきだと思っている。
スペシャリストについては既存の解雇阻止によるセーフガードを外して
自由な雇用形態を認めるべきだ。
会社も年金とかそういったダウンストリームのリテンションを止めて
年俸やボーナスに傾斜した報酬体系に組み替えるべきだ。
それによってもっと高度人材の給与を高めるべきだ。
流動性が何よりものセーフガードで
そして競争力の源泉になると思う。

ダメなら、しょうがない。
ビジネスはそれを許す国に出て行ってやるしかない。
本当は日本でやりたいんだけどね。


haruhicomをフォローしましょう

リターンの側の人になろう

  • 2011/08/14(日) 00:00:01

8年来のUSの友人が
勤めていたバイオテック企業を昨年辞めて
今度自分の会社を立ち上げるので相談に乗って欲しいということで
会ってきた。

土曜日の朝にスタバでミーティングなんていうのは
シリコンバレーじゃよくある話だけど
それでもお互いに勤め人でないから成立する話だ。
僕らは休日も無い代わりに
いつだって自分のためだから
言ってみれば年中バケーションみたいなものだ。

彼がいた会社は業界の人なら誰でも知っている会社で
(探ると当ブログでも触れた記事があるが)
大々的にファイナンスをして一気にIPOの階段を上っていった。
Marketed productもありビジネスモデル的にも成功した。

ただ、市場の荒波にもまれて
会社はモデルの転換を図らざるをえず、
利益重視の方向に近年舵を切り
そして株価は上がったわけだが
拡大路線からも自社開発からもStep backして
彼にとってはもういる場所ではなくなったと。
ただ、上がった株価のおかげで
創業初期からいたかれは十分なお金をストックオプションでつくって
卒業することができたらしい。

VPなんちゃらとかCxOになると
日本では相談役とかいう引退後の末路を歩むが
USだと「さていよいよ!」ということになる。
そこに到達するのも40代、早ければ30代なので
今度は自分で一旗揚げますかということになる。

この辺の資本主義の道理をUSの人はみんな分かっていて
日本だと部長とか専門職とか言われて騙されて働き続けるが
体の良く飼い慣らされているに過ぎない。
口の悪い人は社畜といってみたり。

資本主義においては
資本家とマネジメントと従業員の間にはそれぞれ厳然たる線がある。
資本家はおもしろいと思う事業にお金を出して、リターンを要求する人だ。
マネジメントは資本家の代理人として事業を運営し、リターンを出すことを使命とする人だ。
従業員は労働力、あるいは頭脳を提供することで代わりにフィーを貰う人だ。
場合によってはここにアントレプレナーが入って、事業を提案したり
そのままマネジメントとして運営に携わったりする。
その役割を資本家が自分で行うこともある。

結果、リターン(利益)に対しての立ち位置が違う。
資本家はリターンの配分を受ける人。
マネジメントもリターンの条件に従って配分を受ける人。ただ一方でコストでもある。
一方で従業員というのはリターンの側ではなく、純然たるコストの側。

で、彼はそれを十分に学んだので
自分でやってみますかという話だ。
しかも一度に2つも!
あるものをmaintainするよりも
やっぱり新しいものを作るのが使命だと思うんだそうだ。
いいんでないですか。

あれやこれやとプランを聞いて
できる限りのアドバイスをしたわけだが
そんな彼も少しだけ迷っているのか
"Do you think it's right time to start companies?"
って聞くので
"It's never be right time for people who don't think so and always is for people who believe so。"
って言ったら、その通りだねと笑っていた。

最初のプラン通りに上手くいくかは分からないけど
ああやってよく考えて勇気を持って行動すれば
きっと上手くいくような気がする。

Good luck!


haruhicomをフォローしましょう

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。