バイオベンチャー創業記 2010年11月

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4ヶ月分の命のお値段750万円:Provengeのプライシング

  • 2010/11/10(水) 00:00:01

先に書きました初めて承認を受けた細胞医療でDendreonの前立腺ガンに対する治療薬Provengeですが
なんかすんごい薬価でいろんな議論を呼んでいるようです。

provengelogo

参考 Dendreon's Provenge Questioned in NEJM

1回1ヶ月の投与コースのコストですがなんと$93,000(約750万円)でございます。

「前立腺癌治療薬「Provenge」が3年生存率を38%改善」
と聞くとみなさんはどれぐらい効く薬を想像しますか?
この記載はどれぐらいの人に対してこの薬が効果を示したかで
効いた場合にどれぐらいの延命効果があるかではありません。

抗がん剤の延命効果を解析する場合に一般的に使われるグラフで見てみますと
こんな感じ
provenge
source: New England Journal of Medicine (NEJM)

酷な言い方をしますと
治りません。
ご覧頂いておわかりいただけるように
最後は皆さんお亡くなりになります。
薬を打とうと打つまいと。

"median improvement of 4.1 months compared to the control group (25.8 months versus 21.7 months)"by Dendreon HP
ということですから
生存期間の中央値が対象群に比べて4.1ヶ月長くなるというです。
つまり1ヶ月の延命のお値段180万円。

NEJMのNew Therapies for Castration-Resistant Prostate Cancerの筆者のDr. Longoによりますと
その延命効果に対してそのお値段はいかがなものかと。

さらに通常の抗がん剤と違う点が1つ。
通常はコースの途中で効かなそうな結果になると
途中で投与をストップしてそれ以降の支払いはありませんが
Provengeは1ショットで
支払いも一発です。
従って感触が出始める頃には
支払いは完了済みと言うことです。

ただ、欲しい人がいる限り
どんなに高く価格を設定しても良いのがアメリカで
保険会社が支払いを認める限りは
OKだったりするのです。

以前にAvastin500万円の話も書きましたが
皆さんはどう思いますか、このプライシングは。


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Biotech VCの避けるべき条件

  • 2010/11/09(火) 00:00:01

US Venture PartnersのCasper de Clercqの話から。

Biotechへの投資が厳しくなっているのは日本だけではなく
USも状況は同じです。
でもご心配なくという状況ではなく
より真剣に道を探さなければならないということです。

そんな状況下において投資をするにあたって考えなければならないのは

• Riskと機会のサイズ
 まともにリスクと機会を発生確率でぶつけたらリスクは分が悪いですし
 一方でだからこそ機会の最大値はリスクに比べて十分に大きくないと意味は無いわけです。

• Liquidity
 慈善事業ではありませんからどうやって投資をExitするかということです。
 ただし、日本のVC業界にある回収という考え方は米国VCには一切ありません。
 (念のために日本のVCを少しだけ弁護すると、米国では現金ではなく株式でVC投資家にリターンを出すことが出来ます)

• 最後にCash Demand
 当然ながらお金のうんとかかる業界ですから
 シナリオ別にどれぐらいお金がかかって
 どこまで自分たち(シンジケート)で支えきる腹かということですね。


今現在の米国のバイオVC業界のIPOおよびTrade SalesによるVCのリターンは年間$8-10Bで
一方で投資額は$3-4Bだそうですから
業界全体のリターンはX2でしかなく
その期間に取っているリスクを考えると
あまり割の良くない投資と言えます。
だからこそ有効なストラテジーとポリシーをもって投資をしなければ
儲からないわけですが
黄金則というのはやはり内容です。
ただ経験的に「避けるべき」だと彼が考えるのは

• “Bad” science
これはわかりやすいですね

• Combined target and molecule risk
ターゲットが明確で無かったり
そもそも病態との相関が明確ではなかったり
あるいは作用機序がはっきりしないのはだめというのが

• Long and large clinical trials
これもわかりやすいですね。臨床試験の期間が長かったり、大規模になるのは
お金がかかるので回避をするということです。
ただし、自分でやらないというのも選択肢です。

• Indications with high safety hurdles
これは対象疾患がLife Threatningではなくて
安全性上のハードルが高いようなものを指します。

• Poor surrogate end points
エンドポイントが生存期間だけで3年も追いかけなきゃならないものは
時間がかかってすなわちお金がかかるからですね。

• Inexperienced drug development teams
サイエンスがどんなに良くても
開発が分かっていないチームには投資をしないということです。


これに加えて大原則だといったのが
"D"に投資をするのであって"R"には投資をしない。
すなわち"R"ができあがっていない案件は投資の対象ではないとの事です。

最近はVirtual Biotechと呼ばれる(私は「屋台型ベンチャー」と呼んでますが)
人数が10-15人ぐらいで
Trade Salesをエグジットとして設定して
IPOのための管理部門を持たずに単品で勝負するようなVBが
IPOマーケットの不調を背景に米国で増えています。
こうなるとマーケットのブームではなく
真の価値で評価されることになるわけで
会社側も投資側も真剣に脳みそに汗をかかないとイケないようです。


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PMDAのレビューは短くなるか?

  • 2010/11/06(土) 12:09:42

表題の質問は元FDA長官のDavid Kesslerにさっき聞いたもので
その答えは"We set the clear target and committed"
答えているようないないようなですが
まあ痛烈な皮肉を込めての答えであると思います。

時間を巻き戻しましょう。

Kesslerにそんな質問をしたのはBerkeleyで開催された勉強会です。
半日の彼の持ち時間でかれはこんな話から始めました。

「自己紹介に先立って質問するけど、FDA長官ってどんな人がなると思う?」
アメリカだから会場からさっさと答えがボロボロと出ます。
少し彼が整流してまとめたのはこういうプロファイルです。

1. MD(Medical Doctor) to get credibility from
 a. Doctor
 b. Healthcare Industry
 c. Advocacy Group (患者団体ですね)
2. Managing Skill proven by Experience
3. Publicly aligned (偏って無くかつその時代の要請に沿っている考えの持ち主)
4. No experience at industry (利益代表にならないように)

余談ですがFDA長官の給与は$180k/yr(1500万円ぐらい)で
あの責任においてこの安さで7年間働くと言うのも要件かもねと

FDA長官の任命権というのはHHSのsecretary(日本の大臣ですね)

Kesslerが長官に在任したのは90年から97年で
当時は3つの問題があると彼は認識していたそうです。
1つは長い承認審査期間
2つ目はそもそも薬が承認されないこと。
当時はAIDSが大きな社会問題になっていましたが
AZTしか承認されていませんでした。
最後はジェネリックの問題です。

業界のことをよくご存じの方は
この3つが3つとも「現在の」日本の問題と全く一致することにお気づきでしょう。
つまり20年behindなのです。

さて、彼は39歳で長官に就任するに当たって2つのゴールを設定しました。
(39歳というのは日本ではあり得ない設定ですね、これがアメリカの強さの一つです)
1つは承認審査期間を12ヶ月に短縮する。
もう一つは良い薬はアメリカで世界で最初に承認されるようにする。

では何をどう動かしたらそれが実現するか?

FDAの出来ることは2つ
1つは規制を作り責任をimposeすることで逸脱に罰を設定すること。
2つ目はincentiveを作り動機付けをすること。

1つ目はどの時代も行われている手法ですが
2つ目に関して彼が行った改革が2つあります。
それはFast Trackの運用です。
必要な領域の薬には優先審査を行い
また長期のフォローアップが必要な疾患の回復に代え
surrogate(代理)マーカーによるエンドポイントの設定を認めました。
またreviewer(審査官)の数を増員したわけですが
これには予算が必要になるために
製薬業界に承認審査を12ヶ月に短縮する代わりに
審査費用を大幅に増額をしました。
でも1日承認が早まれば1日あたり数億円単位で収入が増える業界に取っては
全然余裕のオファーです。
これはあっさりと通ることになったわけです。

結果、当時平均38ヶ月かかっていた審査期間を12ヶ月まで短縮し
バイオロジックスのような先進的治療薬が続々と承認されるようになったのです。

一方でこういった方針に対する懸念もあり
承認が雑になることでダメ医薬品が承認されるリスクが高まる可能性があるわけですが
在任期間に承認されてwithdrawされた薬は「いまのところ」それ以前に比べて増えていないようです。
(ただし有名なVioxxの例はあります)

そんな彼も最初はFDAの長官がどんなボタンをおせば事が進むのか相当難渋して
自身で大変勉強になったというケースは
P&Gの作っていたシトラスオレンジジュースが濃縮還元にも関わらず"fresh"と表記していたのに対し
表記が虚偽の記載に当たるとして就任の翌年に
抵抗を続けるP&Gのミネアポリス倉庫で差し押さえを行った日には
多くの議員から電話を受けて避難をうけたそうです。
それで学んだのは先に後盾をきちんと形成してから事を行うということのようです。

彼を一番有名にしたのはタバコ会社との戦争で
タバコは薬かということを巡り規制がかけられるか否かの長期闘争をしたことによります。

興味のある方は詳細を彼の著書

に求めていただければと思うのですが
FDAの定義において薬の定義は

"an article (other than food) that intended to affect the structure or function of body"

となるわけですが
下線の"intended to(意図して)"という部分が争点になり
長い闘争が続きました。

タバコは明らかに体に影響を与えることは確実で
それは実際にいろいろな臨床的なデータをとれば証拠になり得るわけですが
問題はそれが果たして意図してなされた物かどうか。
当然タバコ業界はしらを切るわけですが
特許や内部機密文書の入手により
ついにニコチンを「意図的に」増量して売り上げをはかったり
未成年をターゲットとした裏キャンペーンの存在をつかみ
規制の網をかけることに成功したわけです。

でも際のオレンジジュースのような問題で政治家との対峙に相当苦労した彼が
銃業界とならんで最もロビーの強うそうなタバコに切り込んだのは
彼のスタッフの一人がしつこく彼にその規制を絶対にすべきだと進言し続けたからだというのです。
後年になった彼が知ったというのは
そのスタッフには当時肺がんで入院している父親がいて
彼は毎日出勤前に父親の病床に寄ってからFDAに来ていたという事です。
彼の意欲はすさまじく、Kesslerが
「これがこけたら俺もお前も役人どころか業界人としての生命が絶たれるぞ」
といったところ構わない。後盾も用意してきたと
賛同してくれそうな政治家の準備までしてきたそうだ。

結局この話が本当に動くのは
KesslerがClinton政権にも再任命されて2年たった後で
Clintonが"I want to kill them(タバコ業界)"といったところで
勝負の流れが変わったというのだ。
そんなClintonでも就任直後にはそれはまだ早すぎると却下したというのだから
政治闘争の凄まじさを物語っている。

振り返ってKesslerがいうのは
FDAの長官だった時代は毎日戦争に出かける気持ちだったと。
何をやるにしても内外で激しい抵抗に遭い
それは折れそうになることばかりだけれど
でも自分が完全にCommittしなければ何も動きはしないし
Committするためには自分の信条とかそういったものにきちんと裏付けされていなければ
到底成し遂げられないと思うと。

全く耳の痛い話であると思う。

さて、話を最初の質問に戻すと
日本の承認審査などの現状に疑問をもつ僕は
これはどうしても聞いておかねばならないと思って
日本の現状、そして長い承認審査期間に対する対策として
PMDAのレビュワーの増員を政府が決めたが
それでPMDAのレビュー期間は短縮すると思うかと聞いたところ
かれが皮肉と自負を込めて返した答えがそれだった。

さて、日本は誰が腹をくくって毎日戦争に出かけているのだろうか。



参考:彼の次のアジェンダ。アメリカの肥満の話。


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マーケティングの妙

  • 2010/11/05(金) 05:31:48

医薬品は新規化合物や技術でこれまで治療のなかった疾患に福音をもたらすのが一義的な目的であるが
必ずしもそうじゃないとというお話です。

製薬会社の中で良くあるコンフリクトは
リサーチとマーケティングの関係の中にあり
研究者はマーケターを技術の分からないアホだとか
自分たちの研究を市場が無いからと言って無闇につぶす嫌なやつだと思っており
一方でマーケティングの人は研究者のことを
自分の研究以外の世界をマスかき野郎だと思っている。

しかしあまりに研究に没頭するあまり
マーケティングが失敗してこけたプロダクトとして記憶に新しいのはpfizerのExuberaだ。
吸引型のインスリンなのだが
既存のインスリン製剤はいまやペン型になっていて
携帯性に優れていて、また注射も簡単だ。
デートの途中でテーブルの下でこっそり注射をすることも出来る。
一方Exuberaは針を刺さないで良いことを除くと全くばかげた製品だ。
弁当箱の様な吸引器具を持ち歩き
大げさな操作をしなければ吸引が出来ない。
当然の様な結果としてどうも失敗の方向にことは向かっている。
http://seekingalpha.com/article/216429-will-mannkind-s-afrezza-succeed-where-pfizer-s-exubera-failed

さて一方でマーケティングでイケてないプロダクトがすばらしくなった例を2つ

1つは同じpfizerのViagraだ。
Viagraが商業的に最も成功した理由は対象疾患の発明だ。
正確にはそれをED(Erectile Dysfunction)といってのけたところにある。
この病気、昔はなんと言われていたか記憶に新しいだろう。
  インポ
これじゃ薬は売れない。
いかにも病院に行きにくい病名だ。
しかしこれをEDということで
それは不可抗力のようなイメージをインポーズすることに成功した。
状態は実は何も変わっていない。

実はLillyはその昔、インポの薬を持っていた。
しかし当時のボードの判断はLillyは性関連のプロダクトをやらないということだった。
ところがViagraの成功を受けてボードは突然次のViagra探しに走り
Ciarisを開発して販売していたICOSの買収に至った。


もう一つはNeximだ
これはGERD(Gastroesophageal Reflux Disease 胃食道逆流症)に対する薬で
AstraZenecaから販売されている物だ。
GERDにはNexiumが発売される前にPrilosecという前のバージョンの薬があり
これもAZで開発されたが
その後OTCを含む権利をP&Gにライセンスした。
Nexiumは効果の高いバージョンのPrilosecだが
発売の時期を同じくしてZantacがgskから発売された。
効果は全く同じである。
AZはNexiumを紫のピルにして攻勢ををかけた。
これが功を奏し、Nexiumは順調に売り上げを伸ばしている。
http://www.brandchannel.com/features_profile.asp?pr_id=470

本質的に薬はその薬効で勝負をするところであるが
"Lifesaver"にガテゴライズされるような薬を除くと
特に競合薬があるような状況ではマーケティングで売れ行きが変わるということも
実際にはずいぶんあるようだ。


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